私好みの新刊 202005

『もしも恐竜とくらしたら』 山本省三/作  WAVE出版

 今までに何冊も絵本を作られている山本省三さん、実際に恐竜と暮

らしたら、こんな世界になるのだろうと想像して絵本に描いた。

はじめに、佑太くんの先生への手紙から始まる。

「ぼくは、いま南の小さな島に来ています。ここには、おとうさん

たちが そだてている 恐竜が いるのです。ぼくと いもうとの

ことみも 恐竜の 世話をしています。その一日を 日記に書いた

ので 読んでください。」ジュラジュラ島 梶原雄太 

「これはほんの少し未来のはなしです。」と断りがあるが、どんな話に

なるのだろう。

 まず、恐竜の鳴き声から始まる。テスと言う恐竜の鳴き声が響き渡る。

餌を乗せたトラックが近づくと恐竜のテスは鳴いて餌を待っている。

恐竜はワニやトカゲと同じ仲間だがハトやダチョウなど鳥類と近いそうだ。

それらから予測すると、恐竜は「クワウ、クワウ・・・」と鳴くらしい。

ここでは、ドームの中で恐竜を飼育している様子が描かれている。テスは

植物食の恐竜ステゴザウルスの仲間なので、シダの葉っぱをムシャムシャ

とおいしそうに食べる。1日でトラック1台分とか、大食家の様子。やが

て、ドームの天が開いて日の光がサンサンとあたる。紫外線が骨を作るとか。

テスは、背中に板を持つが、あまり硬くなく体温を調節しているらしい。

テスの糞はロボットがお掃除していく。ロボットが集めた糞はリサイクル

しているとか。糞の化石も見つかっている。やがてテスの散歩時間が来る。

みんなはどのようにしてテスを散歩に連れ出すのか見ものだ。なにせテス

1時間に6キロメートルも歩く。テスも「お手」をするようで知能は高い。

みんなでテスのお掃除もする時がある。何人もかかわって大変な作業である。

作業後はテスは水中を楽しむとか。やがて巨大隕石が地球にぶつかると、

地球は大きな気候変動に巻き込まれる。空想科学物語である。 

                   2019 11月 1,300

 

 『ふゆとみずのまほう こおり』 片平孝/写真・文  ポプラ社

 著者の片平孝さんは、昔からずっと世界中の雪と氷の世界、砂漠、塩の道な

どの写真を撮り続けてこられた。広い地球の世界を取り続けてこられた稀有な

写真家である。その片平さんが、氷の世界の微妙な美しさを見事に表現された

写真本を出した。普通に見ればなんでもない光景が片平さんの手にかかると

美しく跳ねあがる。「ふゆの さむさが みずに まほうを かけた!」と

内表紙にある。

「はりを しんに して うすい こおりの まくが ひろがっていく」

というページもある。水が凍っていくときは、針状の芯がまず出来、しだいに

膜状に広がっていくようだ。その経過が見事に映し出されている。水の中に、

泡立つ氷の写真がある。「みずうみの そこから わきだした ガスが こお

りに とじこめられた。」と説明にある。地下からのガスも凍ってしまうとは

驚きで、アイスバブルという名がある。美しいキノコ氷だ。一体、どんなガス

が噴き出ているのだろうか。

氷の粒も偏光する。美しい色に分光する様子が見て取れる。

「アイスフラワーと よばれる こおりの はな。」

もある。微妙に氷っていく氷の世界をとらえる。水の体積は、摂氏4度で体積

が最大となる。すると池などの氷の表面はどうなるか。行く場所をなくした氷

で山ができる。もこもこと氷の山が続く。空気中の水分が氷になることもある。

「きょうりゅうの は?」は、見事な恐竜の歯にも見える。

「なみけしブロックの しぶきつらら・・」

もある。海水も凍るのはよほど寒い地域、船をつなぐ鉄の杭にも見事なつららが

見つかる。洞窟では氷の柱が立つ。何本も突き出る氷のつららは鍾乳洞を連想

させる。最後に簡単な解説がつけられている。 2019 11月  1,500

             

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